原爆絵画展所沢実行委員会は、2018年8月6日(月)から8日(水)の間、所沢市役所庁舎市民ギャラリー(西武新宿線航空公園駅東口徒歩3分)において「ヒロシマ市民の描いた絵画展」を開催しています。
昨年までの会場(小手指市民ギャラリー)が閉鎖され、今年は開催場所が変わっています。展示される絵画は毎年異なりますので、昨年までご来場の方も新しい絵画をご覧になれます。
原爆絵画展所沢開催の経緯等は、昨年のエントリーで詳しく書きましたので、そちらをご覧ください。
hidenorikato.hatenablog.jp
8月4日の東京新聞でも報道していただきました。
www.tokyo-np.co.jp
NHKでも取り上げていただきました。
www3.nhk.or.jp
埼玉県で自転車保険加入が義務化
「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」
埼玉県では2018年4月1日に「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」が施行され、自転車保険に加入することが義務付けられます。
「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」が改正されました~自転車損害保険加入義務化等~(平成30年4月1日施行) - 埼玉県
誰に加入義務があるのか?
加入義務が課されるのは、自転車利用者、すなわち埼玉県内で自転車を利用する者です(同条例11条、1条)。埼玉県民ではありません。例えば、東京都内在住の人が休日にロードバイクで遠出をして埼玉県内を走行するときにも加入義務があります。
自転車利用者が未成年者の場合、自転車利用者本人ではなくその保護者に加入義務があります(同条例12条)。「未成年者」ですから、18歳の社会人が通勤で自転車を利用している場合でも、自転車利用者本人ではなく、その保護者に加入義務があります。
子どもの自転車はどうなる?
小さいお子さんの親からすると「子どもが何歳から加入すればよいのか?」と疑問をお持ちかもしれません。
条例では「自転車」は、道路交通法の定義に従うことになっており(同条例第1条)、道路交通法では「小児用の車」は「自転車」ではないと定義されています(道路交通法第2条第1項第11の2号)。「小児用の車」は、ベビーカー、小児用三輪車、小児用自転車等と解釈されているようです。
具体的な線引きが難しいこともあるでしょうが、小学生が乗るような自転車であれば、「自転車」に該当し、加入義務があると考えた方がよいでしょう。
違反するとどうなる?
条例に違反しても、罰則はありません。自転車保険に加入していなくても、それ自体で何らかの不利益を受けることはありません。
「ヒロシマ市民の描く原爆絵画展」のお知らせ
私が事務局長を務めている原爆絵画展所沢実行委員会は、2017年8月4日(金)から6日(日)の間、所沢市小手指市民ギャラリーエバー(西武池袋線小手指駅北口徒歩2分)において「ヒロシマ市民の描く絵画展」を開催します。
この絵画展は、1974年5月に一人の被爆者が被爆体験を描いた絵画をNHK広島に持込んだことを発端にしています。この絵画がきっかけになり、NHK広島に膨大な数の被爆者の絵画が集められることなりました。1974年8月には最初の原爆絵画展が広島平和記念資料館で開催され、約2万人の来場者を集めたそうです。一連の運動については、1975年にNHK広島がドキュメンタリー番組『市民の手で原爆の絵を』を製作しています。
www.nhk.or.jp
現在、集められた絵画は、広島平和記念資料館の運営主体である広島平和文化センターが保管しています。各地の市民団体が広島平和文化センターから絵画の貸出しを受け、原爆絵画展が開催されています。
所沢での原爆絵画展は長らく途絶えていましたが、所沢やその近隣の方々にも被爆者の描いた絵画を見ていただこうと、2014年に実行委員会が立ち上がり、所沢での原爆絵画展を開催しました。毎年8月に開催しており、今年で4年連続の開催です。
当日は、被爆者の描いた絵画60点が展示される予定です。広島平和文化センターからは毎年異なる絵画が貸し出されていますから、昨年までの会場に来てくださった方々も目にしたことがない絵画をご覧いただけることと思います。
2017年7月7日、国連本部での会議で核兵器禁止条約が採択されたのは、記憶に新しいことです。広島と長崎での原爆投下から約72年を経て、核兵器は国際法上違法であることが明確になりつつあります。核のない平和な世界の実現のためにほんのわずかでも力になるために、今年も原爆絵画展を開催いたしますので、お近くの方々は会場まで足を運んでいただけると幸いです。
誤解されている痴漢事件
誤解されている痴漢事件
先日の話の続きです。今度は、痴漢を疑われた男性が線路内に立入り、電車にはねられて死亡したと報道されています。
このような危険もありますので、「痴漢を疑われたら逃げろ」は適切な対応ではありません。
ところで、ここ数日、SNSでは痴漢事件が話題になっており、「痴漢を疑われたら逃げろ」の是非も議論になっています。弁護士以外の方も含めて議論が盛んになるのはよいことではありますが、その中には明らかな誤解に基づく意見もあるようです。
「否認すると20日間勾留される」
「否認すると20日間勾留される」と理解している方がいるようです。
たしかに、一昔前までは、痴漢に限らず、被害者が存在する犯罪で否認すると、被害者と接触して罪証隠滅をはかるおそれがあるとして、安易に20日間の勾留が認められる傾向がありました。
しかし、ここ数年で風向きが変わりました。2013年秋ころからさいたま地裁内で若手裁判官が中心になり、身柄事件に関する勉強会が行われるようになりました。その中で、これまで勾留が認められていた事案でも、必ずしも勾留が必要ではない事案があるという考えが広まるようになりました。この勉強会の影響もあり、2013年秋からさいたま地裁での勾留却下率は全国平均を大きく上回るようになり、注目されました。
そんな中、2014年11月に最高裁が勾留に関する決定を出しました。事案は、京都市内を走る電車内での痴漢事件です。被疑者は否認していました。京都の裁判官が勾留を却下しましたが、検察官が不服を申立てをし、京都地裁の合議体が勾留を認める決定をしました。これに対して、弁護人が最高裁判所に不服申立てをしました。最高裁判所は、次のような理由で、勾留を却下しました。
被疑者は、前科前歴がない会社員であり、原決定によっても逃亡のおそれが否定されていることなどに照らせば、本件において勾留の必要性の判断を左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度と考えられ、原々審が、勾留の理由があることを前提に勾留の必要性を否定したのは、この可能性が低いと判断したものと考えられる。本件事案の性質に加え、本件が京都市内の中心部を走る朝の通勤通学時間帯の地下鉄車両内で発生したもので、被疑者が被害少女に接触する可能性が高いことを示すような具体的な事情がうかがわれないことからすると、原々審の上記判断が不合理であるとはいえないところ、原決定の説示をみても、被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあるというのみで、その可能性の程度について原々審と異なる判断をした理由が何ら示されていない。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84640
一般的に、電車内の痴漢事件では、被疑者にとっては被害者がどこの誰かわからないので、釈放後の被疑者が被害者と接触する可能性は高くはありません。最高裁は、被害者と接触する現実な可能性の程度を考慮し、勾留の必要がないとの判断を覆すことはできないとしたのです。
最高裁の決定は、下級審裁判所に影響を与えます。2015年12月には、東京地裁では痴漢事件は原則として勾留が認められていないと報道されています。
痴漢事件に関しては、「否認すると20日間勾留される」ということはありません。
「99.9%有罪になる」
日本の刑事裁判では「99.9%有罪になる」ので、否認しても無駄だから逃走した方がよいという方がいます。
しかし、「99.9%有罪になる」というのは誤解です。これは以前に私のブログでも書きました。
hkato.ribbon-law.jp
有罪率が99%超というのは、自白事件を含めたすべての事件で有罪率が99%を超えているのであり、弁護人が本気で無罪主張をする事件で99%超が有罪になっているわけではありません。
また、日本の刑事司法では、起訴するか否かは検察官の裁量であり、捜査がされても検察官が起訴するとは限りません。検察官は、無罪判決を嫌いますので、起訴しても無罪判決になる可能性が高いときは、不起訴(嫌疑不十分)にします。不起訴になれば、刑事裁判にはなりません。
およそすべての刑事事件で立件されてしまえば「99.9%有罪になる」というわけではありません。
「被害者の供述は絶対に信用される」
「被害者の供述は絶対に信用される」という方もいるようです。
これは不正確だと思います。痴漢事件における被害者供述の信用性については、2009年の最高裁判決があります。事案は東京都内の電車内での痴漢事件です。被告人は否認し、地裁と高裁は被告人を有罪としましたが、最高裁が逆転で無罪判決を言渡しました。
最高裁は、被疑者供述の信用性については、次のように判断しました。
被告人は、捜査段階から一貫して犯行を否認しており、本件公訴事実を基礎付ける証拠としては、Aの供述があるのみであって、物的証拠等の客観的証拠は存しない(被告人の手指に付着していた繊維の鑑定が行われたが、Aの下着に由来するものであるかどうかは不明であった。)。被告人は、本件当時60歳であったが、前科、前歴はなく、この種の犯行を行うような性向をうかがわせる事情も記録上は見当たらない。したがって、Aの供述の信用性判断は特に慎重に行う必要があるのであるが、(1) Aが述べる痴漢被害は、相当に執ようかつ強度なものであるにもかかわらず、Aは、車内で積極的な回避行動を執っていないこと、(2) そのことと前記2(2)のAのした被告人に対する積極的な糾弾行為とは必ずしもそぐわないように思われること、また、(3) Aが、成城学園前駅でいったん下車しながら、車両を替えることなく、再び被告人のそばに乗車しているのは不自然であること(原判決も「いささか不自然」とは述べている。)などを勘案すると、同駅までにAが受けたという痴漢被害に関する供述の信用性にはなお疑いをいれる余地がある。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37531
客観的証拠が存在しない場合には被害者供述の信用性判断は特に慎重に行う必要があるという規範の下、被害者供述の信用性を否定したのです。
このように「被害者の供述は絶対に信用される」というわけではありません。痴漢事件で被害者供述の信用性を否定して無罪判決がでることは決して珍しくありませんし、むしろ無罪判決が出やすい類型の事件とも言われています。