弁護士加藤英典のブログ

埼玉県所沢市の弁護士のブログです。

「望むのは死刑ですか 考え悩む”世論”」

2月3日にドキュメンタリー映画「望のは死刑ですか 考え悩む”世論”」の上映会(埼玉弁護士会主催)に参加してきました。
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映画のもとになっているのは、2015年に日本で実施された審議型意識調査です。
日本国は死刑制度を存置しており、その根拠として、世論調査において国民の8割が死刑制度存置に賛成していること等を挙げています。ところが、この世論調査については、アンケートの質問文が不適切であり、死刑制度存置が多数になるように誘導している等の批判があります。
劇中の審議型意識調査では、無作為で選出された参加者を会場に集め、死刑制度に関する情報を与え、存置派・廃止派を交えて議論をし、熟慮を経た上で、改めて死刑制度の存廃についての意見を回答してもらいます。このような方法で、何が本当の国民の意見なのかを考えていくのです。
参加者の中には、議論の中で自らの意見を変える方もいました。また、中には頑なに自らの意見を変えようとしない方もいました。映画では、そうした一人一人の参加者を丁寧に記録しています。
参加者の内何名かはわずか2日間の調査の間に意見を変えており、アンケートによる世論調査の結果が移ろいやすいものであることがうかがえました。その一方で、参加者全体で見てみると、存置・廃止の意見の割合は調査前と調査後とでほとんど変わっていないという結果になりました。私もなんとなく「死刑制度に関する十分な情報が与えられれば、廃止に傾く」と思っていたのですが、そんなに単純な話ではないようです。
審議型意識調査という調査方法が日本ではなじみが薄いということもあり、非常に興味深かったです。弁護士会の会長声明等で「死刑制度廃止に向けた国民的議論をすべき」と書かれていると、何をもって国民的議論とするのかがピンとこなかったのですが、ヒントになったような気がします。
映画は、2月11日から各地の劇場で上映されています。